【感想】煙か土か食い物/舞城王太郎

感想

あらすじ

サンディエゴで救命外科医として働いていた奈津川四郎は、ある日同僚からショッキングな報せを受けました。

日本で暮らしている母親が何者かに襲われ、意識不明の重体になっているとのこと。

連続主婦殴打生き埋め事件の被害者となってしまった母親。

帰国した四郎は「復讐は俺に任せろ!」とばかりに暴力や恫喝などの手段を選ばない犯人捜しをはじめていきます。

グロテスクでバイオレンス、血の匂いを感じてしまうような、強烈な第19回メフィスト賞受賞作品。

舞城王太郎さんの衝撃デビュー作です。

こんな人におすすめ!

力強くて引っ張られるような文体の作品が読んでみたい!
ハラハラドキドキするような物語を探している
舞城王太郎作品に興味がある!

煙か土か食い物 感想①:乱暴で特徴的な文体

物語は改行なしのノンストップ一人称視点からはじまります。

埋め尽くされる文字、文字、文字。

1ページ目を開いた時点で、思わずドキッとしました。

しかし、普通なら読み進める気力が奪われてしまうような長文なのに、乱暴で力強い文章にどんどん惹きこまれていってしまうんです。

「なんでこんなに文字尽くしなのに、自分は読めてるんだろう?」と理解が追いつかないほどの文章力。

読み進めるスピードが自分でコントロールできず、いきなり主導権を奪われたかのような錯覚。

舞城王太郎さんの「煙か土か食い物」を手に取ったとき、物語の導入や展開よりも、まずはその文体に心を掴まれてしまいました。

煙が土か食い物 感想②:テーマは家族愛

主人公の家庭事情は複雑で凄惨です。

主人公四兄弟は、常に父親からの虐待に怯えていました。

特に次男の二郎は父親への反発も強く、より酷い虐待に身をさらし続けている描写がこれでもかと描かれていきます。

すり減っていく家族。

力強い文体だからこそ、残酷な描写はより際立って読者に伝わってくるんですよね。

最悪で最低な家庭環境のなかでさえ、主人公の「家族への愛情」を手放しきれない心理描写が、家族という繋がりの強固さを良くも悪くも実感させられます。

その中でも、特に辛くて読む手がとまってしまったのが、祖母と母親が二郎を突き放してしまったシーン。

一番虐待の風当たりを強く受けていて、一番家族の愛情に飢えていた二郎が、家族に突き放されるシーンは胸が苦しくなるような感覚を覚えました。

凄惨な過去を抱えていても、家族としての幸せをみつけることはできるのか。

物語の展開と結末に怯えながらも、最後まで読み進める手が止まらない作品だったと思います。

煙か土か食い物 感想③:舞城王太郎という作家

煙か土か食い物は、初めて手に取った舞城王太郎さんの作品でした。

これまで、雨の日書庫の管理人は物語の展開や人物の心理描写を楽しみながら小説を読んできました。

が、文体が楽しくて読み切った作品はそうそうない気がします。

ぶっ飛んだキャラクターである暴力的な主人公の脳内を、整理もせずまとめもせずに縦横無尽に描写されているような感覚。

一人称視点の破壊力がとてもよく実感できる作品だったと思います。

管理人:雪道
管理人:雪道

管理人はまだ舞城王太郎さんの他の作品を読んだことがないので、独特の文体を楽しみにしながら次の作品を選んでみようとワクワク中です!

この作品が好きな方へ:管理人おすすめ小説

佐藤究さんがおくる直木賞、山本周五郎賞のダブル受賞作品。心臓売買を描いた暴力渦巻く衝撃作品です。現実では眉をひそめてしまうような「悪」に心が奪われてしまう背徳感のある読書体験が魅力だと思います。

この小説に描かれたことは全て現実にしなくてはならない。文才のある弟と、その弟に翻弄されていく兄の物語。私小説を描くために、破天荒で暴力的な生活を強いられていく兄の姿から、痛々しくも目が離せない岩井圭也さんの問題作です。

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