
SF小説チャレンジ第5弾!今回の記事では初めて国内作家さんをご紹介していきます!企画の詳細はこちらの記事をご覧ください。
作品名:エクソダス症候群
こんな人におすすめ!
未来の精神医療を覗いてみたい方
人類の惑星移住に興味がある方
宮内悠介作品に興味がある方
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あらすじ

人類が火星に移住を果たし、開拓を進めている近未来。
地球では最新技術を用いた医療によって、精神疾患が完全にコントロール下に置かれていました。
一方、開拓地である火星では物資の不足から、まだまだ人間と精神疾患との闘いが繰り広げられています。
そんな中、恋人の自殺が原因で地球を追われた精神科医カズキは、かつて父親が精神科医として過ごしていた火星に帰ってくることに。
地球と火星の精神疾患への向き合い方を目の当たりにして、カズキはなにを想うのか。
正気の境目とはどこにあるのか。
火星唯一の精神病棟“ゾネンシュタイン病院”にて、人類と精神疾患との歴史が紐解かれていくことになります。
大人気SF作家、宮内悠介の初の長編作品!
ストーリー:★★★★☆

舞台は火星、テーマは精神医療史。
地球の発達した精神医療と火星の原始的な精神医療の対比を通して、「なにが精神医療として正しいのか?」ということが深掘りして描かれていきます。
地球のように、最新のコンピュータで完璧に精神疾患をコントロール下に置いた投薬治療が正しいのか。
火星のように、かつての地球で問題視された精神外科(脳に直接メスを入れる)治療が正しいのか。
機械を通さずに自分の目で患者と向き合っていくなかで、
・患者の体にどこまで手を加えるべきなのか
・手を加えたとして、個性が損なわれることはないか
・そもそも、どこからが「個性」でどこからが「疾患」といえるのか
といった、答えのない難しい問いにカズキは挑んでいくことになるんです。
読者も精神医療史について学びながら、深く考えさせられるようなストーリーになっているんですよね。
また、物語中盤からはカズキの生い立ちに迫っていく展開も描かれており、思わず背筋がゾッとするような設定が終盤にかけて明らかになります。
テーマだけではなく、登場人物たちのストーリーも見逃せないポイントのひとつです。
宮内悠介さんの人間の内面の描き方に、冷汗を感じながらも手離せない魅力を感じることができる一冊ではないでしょうか。

とある患者とカズキが対面して診察を行うシーンでは、お互いに刃物を突き付け合うかのような緊迫感があって手に汗握ってしまいました!
読みやすさ:★★★☆☆

惹きこまれてしまうような危うい暗さ、人間の内面を狂気的なまでに暴く苛烈さが魅力である宮内悠介さん。
「エクソダス症候群」でも、その独特な読み味が光っています。
ですが、読みやすさという点でみると、難しさが目立つ印象なんですよね。
感情移入して読む、というよりも「人間のこんな一面にどうやって向き合うのか?」という哲学的な楽しみ方が必要な気がします。
管理人自身、はじめて手に取ったときは難しいと感じましたし、求めていたSFのワクワクとは違ったなと感じました。
そのため、SF入門としてはおすすめできないかもしれません。
ですが、宮内悠介さんの魅力は読みやすさではなく、人間の狂気を描き切る筆力の強さです。
尖って突き抜けているからこそ、好きになったときの引力がとてつもない作家さんなんですよね。
人間の暗い部分に魅力を感じる方、ほのぼのワクワクだけではないSF小説を探している方には「エクソダス症候群」をぜひオススメしたいと思います。

科学の発達で人間の恐さや愚かさが浮き彫りになる、という点ではディストピア小説やポストアポカリプスのようなジャンルが好きな人にも刺さるのではないでしょうか?
まとめ
第5弾SF小説チャレンジとして記事を書かせていただいたのは、宮内悠介さんの「エクソダス症候群」でした!
SF小説チャレンジとしては初めての国内作家さんということもあり、どの作家さんを取り上げるか悩みました。
そこで、管理人の読書遍歴を振り返ったとき「そういえば、最初にハマったSF小説って宮内悠介さんの作品だったな」と思い出したんですよね。
当時はSF小説と意識して読んだわけではなかったのですが、独特な読み味と読後感にハマってしまって、しばらく宮内悠介作品にのめり込んでしまったことを覚えています。
本作「エクソダス症候群」は陰鬱な雰囲気やほの暗い感情を扱っていることから、癖はあるものの、好きな人はとことん好きになれる魅力を秘めているのではないでしょうか?
科学の発達によって暴かれる、人間の本性や社会の変化。
一味違ったSF小説を探している方は、ぜひ手に取ってみてください!


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