あらすじ

「時間ってなんだろう?」
どこで生まれたのか、どこから来たのかわからない不思議な少女、モモ。
町はずれの円形劇場に突然現れた彼女を、町の人たちは暖かく迎え入れてくれます。
彼女は人の話を聞くのが、とても上手な女の子でした。
どんな悩みや争いも、彼女に話を聞いてもらうだけで自然と解決してしまいます。
ケンカをしていても、悩みを抱えていても、モモが話を聞くだけで、自分の本心に気付き、みんな自分自身をみつけて帰っていくのです。
「モモのところに行ってごらん!」
いつしかそんな合言葉が馴染むほど、モモと町の人たちは仲良く穏やかな時間を過ごしていました。
そんな、ささやかな幸せを奪ってしまう“時間どろぼう”の魔の手が忍び寄っていることも知らずに…。
老若男女に贈る、“時間”とは何かを問う、エンデの名作。
こんな人におすすめ!
ハッと大切なことに気付かされるような作品が読みたい!
読みやすくて、感動できる本を探している
児童文学に興味がある
感想:老若男女に贈る児童文学

以前からずっと気になっていた、この「モモ」という作品。
色々なメディアで紹介されていて、有名な作品だったんですよね。
「本当に面白いのだろうか?」
と半信半疑で読み始めた作品だったのですが、“大人になったいま”だからこそ感動できる物語がそこには描かれていました。
児童文学ゆえに、読みやすく、難しい表現も一切ない。
なのに、読んでいて胸に刺さるような言葉や表現に溢れていたんです。
モモの純粋で、世間知らずで、でもだからこそ大切なものは何かを知っているキャラクター像は、読者の気持ちを洗い流してくれるような魅力に満ちていました。
これまで多くの小説、文学に触れてきましたが、児童文学には大人になって見失ってしまったものが詰まっているかのように思います。
「いま、自分は大切なもののために時間を使えているのだろうか?」と、思わず自分を省みてしまうような作品でした。
今では、私がこれまで読んできた本のなかでも、特に大切にしたい作品のひとつになっています。
感想:時間を奪われるということ

この物語では、登場人物たちが感じる幸せと、それを奪われてしまう悲痛さが描かれています。
モモの親友の一人であり、物静かで、人一倍考えることを大切にしていて、言葉を伝えるまでにすごく時間がかかってしまう道路掃除夫のベッポ。
彼は、彼なりに仕事を楽しむためのコツを大切にしています。
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
モモ本文より
「すると、たのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」
この言葉が、私はとても大好きなんです。
難しく考えすぎて疲れてしまうより、目の前のことに集中して、落ち着いてやっていればきっと楽しくなってくるはず。
日常生活のなかでも、仕事の最中でも、この精神でありたいと思っています。
そしてもう一人の親友が、お話し好きで、誰よりも陽気で明るいジローラモ、通称観光ガイドのジジ。
彼も、自分の考えをしっかりと持っていて、夢を追いかける若者として描かれています。
「でもな、ちっとばかりのいいくらしをするために、いのちもたましいも売りわたしちまったやつらを見てみろよ!おれはいやだな、そんなやり方は。たとえ一ぱいのコーヒー代に事欠くことがあってもーージジはやっぱりジジのままでいたいよ!」
モモ本文より
忙しさや豊かさよりも、自分らしさを大切にする彼の考え方は、胸に刺さる方も多いのではないでしょうか?
しかし、“時間どろぼう”の手によってそんな彼らの幸せな時間は奪われてしまうことになるのです。
物静かだったベッポは、自分のコツを大切にして仕事に愛情を注ぐ時間を奪われ、忙しなく次々と働かされることを強いられました。
お話好きだったジジは、話すことだけに時間を使わされ、新しいお話や楽しいお話を考える時間を奪われます。
時間どろぼうのせいで変わり果ててしまった彼らの姿は、モモを深く傷つけることとなるのです。
感想:自分らしさを守るためには、ゆとりのある時間が必要である

「生きていくための時間」と「自分らしさを守るための時間」は、別物なんだと思います。
仕事の時間、食事の時間、睡眠時間。
どれも生きていくうえでは欠かせない時間ですよね。
でも、どの時間も自分らしさを守る時間ではないように感じます。
仕事中の緊張感や責任感は肩に重くのしかかるだけだし、食事で満腹になっても自分らしさは見当たりません。
たくさん寝ても、それが幸せかといわれると違う気もします。
私の場合は、読書をして自分のなかであれこれ考える時間や、目の前の興味あることに没頭している時間が自分らしさを作ってくれる時間なのかな、と思いました。
生活していくためには、たくさんの時間が奪われます。
嫌なことを我慢する必要がありますし、苦手なことに向き合う選択も迫られることだってあるでしょう。
「あぁ、明日は失敗できない仕事があるから早く寝てしまわないと…」
「嫌なことが続いたから、今日はもうなにもしたくない…」
しかし、そう感じている時にこそ、自分らしさを犠牲にしていないか落ち着いて考える必要があるのではないでしょうか。
早く寝て、次に日の仕事は上手くいくのでしょうか?
嫌なことがあった日は、なにもしなければ気持ちは晴れるのでしょうか?
違いますよね。
次の日も自分らしく頑張るために、自分が幸せだと思えることに時間を使って英気を養うんです。
嫌なことがあった日こそ、自分らしく時間を過ごして自信を取り戻すんです。
ベッポが目の前の仕事に集中して、ゆとりを持って愛情を注ぐように。
ジジが楽しいお話を考えるために、モモと話す時間を大切にしていたように。
「ただ生きていくための時間」とは別のところに、自分を支えてくれる「自分らしさを守る時間」はあるのです。
私が、この「モモ」という作品を読んで痛感したことは、つまりそういうことでした。
みなさんは、日々の忙しさやプレッシャーに押しつぶされて、知らぬ間に時間が奪われてはいませんか?
本当は一番に大切にしなくてはならない、自分らしさを守る時間を後回しにしてはいませんでしょうか。
ぜひ一度、この児童文学を手に取ってみてください。
あなたの一番大切な、本当に必要な時間を、モモが取り返してくれるはずです。
簡単に捨ててしまっていた、ゆとりのある時間こそが、本当の自分らしさを宿しているのかもしれません。
モモ (岩波少年文庫) [ ミヒャエル・エンデ ]
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